古代ギリシャから受け継がれる、ノコギリソウの物語
可憐な白い花を咲かせる、ノコギリソウ。
その穏やかな姿からは想像しにくいかもしれませんが、
古くからこの植物は、「戦士のためのハーブ」として語り継がれてきました。
ノコギリソウの学名は、
Achillea millefolium(アキレア・ミレフォリウム)。
「Achillea」という名前は、ギリシャ神話に登場する英雄
アキレスに由来するといわれています。
剣や槍で傷ついた兵士たちのために
アキレスは、トロイア戦争で活躍したギリシャ神話を代表する戦士です。
幼い頃、薬草の知識に優れた賢者ケイローンから植物の扱い方を学び、
戦場では、剣や槍によって傷ついた兵士たちの手当に
ノコギリソウを用いたと伝えられています。
まだ医療が発達していなかった時代、戦場での深い傷や出血は、
兵士たちの命を左右するものでした。
抗菌作用、抗真菌作用、止血作用など排出力に秀でており、
非常に強い抗炎症作用で傷を治癒してくれる。
ノコギリソウは、葉をすり潰したり、煎じたりして傷口に当て、
出血を抑え、傷を清潔に保つための植物として古代より
利用されてきました。
そのため、ヨーロッパでは長い間、ノコギリソウは、
「戦場の薬草」「兵士の傷薬」
として知られてきました。
これは、古代ギリシャの民族植物学や神話の中に
度々残されている植物です。ノコギリソウが傷を
手当てするための植物として、古くから人々の暮らしの中で
利用されてきたことを今に伝えています。
不死身の英雄と「守る植物」
アキレスは、かかとを除いて傷つくことのない、
ほぼ不死身の肉体を持つ戦士でした。
しかし、唯一の弱点であったかかとを矢で射られ、
命を落としたと伝えられています。現在の「アキレス腱」という名称や、
“唯一の弱点”を意味する英語の「Achilles’ heel」は、
この神話に由来しています。
アキレスの名を受け継ぐノコギリソウは古くから
傷ついた人を守る植物として大切にされてきました。
強さとは、決して傷つかないことではなく、
傷ついたときに、自らを立て直す力を持つこと。
そんな植物の生命力が、アキレスの物語と
重なったのかもしれません。
「千枚の葉」という名前
学名のもう一つの言葉、millefoliumは、ラテン語で「千の葉」を意味します。
ノコギリソウの葉には、まるで無数の小さな葉が集まったような、
細かく深い切れ込みがあります。日本名の「ノコギリソウ」も、このノコギリの刃に
似た葉の形から名づけられました。
花は繊細でありながら、乾燥や寒さにも耐え、厳しい環境の中でたくましく育ちます。
小さな花と細い葉の内側に、強い生命力を秘めた植物なのです。
戦場の薬草から、現代のスキンケアへ
かつて戦士たちの傷に寄り添ったと伝えられるノコギリソウ。
現在では、その長い伝統と植物としての性質に着目し、
肌を健やかに整える植物エキスとして、スキンケアにも取り入れられています。
古代ギリシャの戦場から、現代を生きる私たちの肌へ。
モントオリンプが大切にしているのは、ギリシャの自然の中で受け継がれてきた
植物の知恵を、いまの暮らしへ届けることです。
ノコギリソウの小さな花には、傷ついた戦士を守り続けてきたという、
力強く美しい物語が息づいています。